たどる影は眞善美)
三の星こそ並ぶなれ。

坤輿一球透き通り
仰ぎて上に見るがごと
下にも光る千萬《せんまん》の
星の宿りを眺め得ば
下界の名さへ空しくて
我世いみじと知るべきを。

まことの光りまことの美
狹霧に蔽はれとざされて
暗にさまよふわがこゝろ
たのむは獨り君が歌
紫蘭の薫り百合花の色
爲めに咲かなん君が歌。

しらべも高くねも高く
あらきあらしを和げて
微妙の樂に替ふるてふ
君が玉琴かきならし
涙のうちにほゝゑみて
暗のうちにもかゞやきて。

かのオルヒスのなすところ
陰府《よみ》に繋がる魂を解き
かのピタゴルの説くところ
御空に星の樂を聞き
かのプラトンの見るところ
高き理想の夢に醉へ。

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(註)(一)失樂園第三卷
   (二)ヲルヅヲルス
   (三)ロセツテ
   (四)セークスピア
   (五)ダンテ
   (六)ゲーテ
   (七)オライオンの星宿
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[#ここで字下げ終わり]

  はるのよ

あるじはたそやしらうめの
かをりにむせぶはるのよは
おぼろのつきをたよりにて

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