A第3水準1−84−34]師節度を誤れる
街亭の敗何かある、
鯨鯢吼えて波怒り
あらし狂ふて草は伏す
王師十萬秋高く
武都陰平を平げて
立てり渭南の岸の上。
拒ぐはたそや敵の軍、
かれ中原の一奇才
韜畧深く密ながら
君に向はんすべぞなき、
納めも受けむ贈られし
素衣巾幗のあなどりも、
陣を堅うし手を束ね
魏軍守りて出ざりき。
鴻業果たし收むべき
その時天は貸さずして
出師なかばに君病みぬ、
三顧の遠きむかしより
夢寐も忘れぬ君の恩
答て盡すまごゝろを
示すか吐ける紅血《くれなゐ》は、
建興の十三秋なかば
丞相病篤かりき。
(五)[#「(五)」は縦中横]
魏軍の營も音絶て
夜は靜かなり五丈原、
たゝずと思ふ今のまも
丹心國を忘られず、
病を扶け身を起し
臥帳掲げて立ちいづる
夜半の大空雲もなし。
※[#「刀」の「ノ」が横向き、第3水準1−14−58]斗聲無く露落ちて
旌旗は寒し風清し、
三軍ひとしく聲呑みて
つゝしみ迎ふ大軍師、
羽扇綸巾膚寒み
おもわやつれし病める身を
知るや非情の小夜あらし。
諸壘あまねく經※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りて
輪車靜かにき
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