フ橋
岡も替へよや臥龍の名、
草盧あしたはぬしもなし。
成算胸に藏まりて
乾坤こゝに一局棋
たゞ掌上に指すがごと、
三分の計《けい》はや成れば
見よ九天の雲は垂れ
四海の水は皆立て
蛟龍飛びぬ淵の外。
(三)[#「(三)」は縦中横]
英才雲と群がれる
世も千仭の鳳高く
翔くる雲井の伴やたそ
東新野の夏の草
南瀘水の秋の波
戎馬關山いくとせか
風塵暗きたゞなかに
たてしいさをの數いかに。
江陵去りて行先は
武昌夏口の秋の陣
一|葉《えふ》輕く棹さして
三寸の舌呉に説けば
見よ大江の風狂ひ
焔亂れて姦雄の
雄圖碎けぬ波あらく。
劔閣天にそび入りて
あらしは叫び雲は散り
金鼓震ひて十萬の
雄師は圍む成都城
漢中尋で陷りて
三分の基はや固し。
定軍山の霧は晴れ
※[#「さんずい+眄のつくり」、第4水準2−78−28]陽の渡り月は澄み
赤符再び世に出でゝ
興るべかりし漢の運、
天か股肱の命盡きて
襄陽遂に守りなく
玉泉山の夕まぐれ
恨みは長し雲の色。
中原北に眺むれば
冕旒塵に汚されて
炎精あはれ色も無し、
さらば漢家の一宗派
わが君王をいたゞきて
踏ませまつらむ九五の位、
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