笑み
虹のなゝ色ちごのため
西の夕榮老のため
染むる光のたふとしや。
高きは山か山よりも
清きは水か水よりも
露はうるはし露よりも
花はかぐはし花よりも
すぐれてくしき比なき
光仰ぐもたふとしや。
水の初めて湧くがごと
ちごの産聲擧ぐるごと
シオンの琴の震ふごと
天使の空を飛ぶがごと
とはに新たにまことなる
光仰ぐもたふとしや。
アルハ、オメガを身に兼ねて
今あり後あり昔あり
妙華花咲く池の岸
シナイ雲湧く峯の上
彌陀もエホバもとこしへの
光のうちにほゝゑみぬ。
獨り我世に許されし
光のあとを眺むるも
夜は千萬の星の色
あけぼの白く雲われて
明星のまみ閉づるとき
照るもまばゆし旭日影。
緑りしづけき峰の上
いみじくゑめるさま見れば
「神のうひご[#「うひご」に「(一)」の注記]」ぞ忍ばるゝ
「魔界の旅[#「旅」に「(二)」の注記]」の終るとき
ふたりの道にあらはれて
照らすは清き朝の波。
暮は遠やま西の山
「浮世もやすめ」夕光り
くれなゐ染めて沈むなり
かくや命の消えんとき
かくやむくろを拔け出て
魂の他界に去らんとき。
夜《よる》の黒幕たれこめて
微かに星のきらめくを
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