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Behind the veil! behind the veil !”
     ―Tennyson : In Memoriam.
[#ここで字下げ終わり]
[#ここで横組み終わり]

   (一)[#「(一)」は縦中横]

思入日を先きだてゝ
たそがれ近き大空に
うかびいざよふ雲のむれ
暮行くけふの名殘とて
見るめまばゆきあやいろを
染むるは何のわざならむ。

あるは幾重の空のよそ
あるは幾重の嶺のうへ
かろく流るゝくれなゐは
セラフ、ケラブの旗を見せ
ゆるく靉びくむらさきは
あまつをとめの裾や曳く。

夕/\の空の上
替るもゝちの面影を
替らぬ愛に眺むれば
たゞ聯想の端《はし》となる
雲よ自在のはねのして
いづくのはてに翔けり行く。

あゝ夕雲のかけりゆく
空のあなたぞなつかしき
心の渇きとゞむべき
そこに生命《いのち》の川あらむ
眞理のかどを開くべき
そこに秘密《ひみつ》の鍵あらむ。

嗚呼夕雲のはねのうへ
たれか「涙の谷」棄てゝ
荒鷲翔けり風迷ふ
空のあなたに飛行かむ
浮世の暗にしられざる
光はそこにてるべきに。

花より花にむれとびて
蜜を集むる蜂のごと
星より星に光
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