をと
飛行く魂を眺めけむ
詩人[#「詩人」に「(一)」の注記]のくしきまぼろしを
たれかうつゝに返すらむ。
(二)[#「(二)」は縦中横]
消えしエデンの花園の
おもわは今も忘られず
ほす味にがきさかづきの
底なる澱《おり》に醉はんとて
塵の浮世に塵の身は
かくもいつまで殘るらむ。
涙の谷にさまよひて
ねぬ夜の夢に驚けば
こゝにバイロン血に泣きて
「死と疑の子」となのり
こゝにシルレル聲あげて
「理想は消ゆ」と※[#「口+斗」、13−下−5]ぶなり。
アボンの流[#「アボンの流」に「(二)」の注記]しづかにて
すゞしく月を宿せども
見えぬそこひに波むせび
グラスメヤア[#「グラスメヤア」に「(三)」の注記]の水面《みなも》にも
うつる此世の影見れば
たゞ海神《かいじん》の[#「海神《かいじん》の」に「(四)」の注記]なつかしや。
さればラインの岸遠く
思をこめ[#「思をこめ」に「(五)」の注記]て人は去り
ゼネワの夏の夕暮は
よその恨の歌[#「恨の歌」に「(六)」の注記]を添へ
深き嘆はネープルの
波も洗ひ[#「波も洗ひ」に「(七)」の注記]や得ざりけむ。
波に照れと
前へ
次へ
全54ページ中14ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
土井 晩翠 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング