甚だ高く、本書の自序に、『……小説の世に於ける音樂畫圖の諸美術と一般、尋常遊戲の具に過ぎず、本書を讀む者亦之を遊戲具を以て視る可なり……』そして卷後に七絶を題して曰ふ、
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『年少誤懷天下憂・時々深夜聞[#レ]鷄起・半生事業何所[#レ]成・抂向[#「抂向」に白丸傍点][#二]燈前[#「燈前」に白丸傍点][#一]編[#「編」に白丸傍点][#二]小史[#「小史」に白丸傍点][#一]』
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彼は眞正の文學の偉大を(時代が時代ゆゑ)分らないのである。「經國美談」の二十二年前即ち千八百六十三年『レ・ミゼラブル』に大ユーゴーの序した左の文と對照するも善からう。
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『法律及び慣習の力を假りて一種の社會的處罰が此世に存し、文明のただ中に人爲的地獄を造り、人界の災難を以て神聖の運命を紛糾せしむる限り、――現時の三問題、貧困による男子の墮落、飢餓による女子の破滅、暗夜による小兒の萎縮――の解放されざる限り――或方面に於て社會的假死状態の可能なる限り――(更に一層廣き見地より換言すれば)地上に無知と悲慘との存せん限り、本書の如きものは無用なら
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