るがごとく見え、その形打ちひしがれたる蛇の首のごとく平たし。三つの鬼女全く同じ形相にて並びつくばいたれば、左の肩よりいと長きくろ髪、石段の上に流れ横たわる。依志子のものいうをながめてあれど、妙念もこれを背《そびら》にしたれば知ることなし。
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依志子 妙念様、そうではございませぬ、もう最期《いまわ》に私も、物のまことを申しとうございます、私は――私は――
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語終らざるに怪しく叫びてついに昏倒《こんとう》す。
鬼女つくばいたるままに身を退けば、黒き髪のたうち[#「のたうち」に傍点]のぼりてともにかくる。妙念は鬼女の顕われしころより再び※[#「りっしんべん+曹」、37−上−1]然《そうぜん》としてたましい[#「たましい」に傍点]うつけ、依志子が最後の悶叫《もんきょう》をも耳に入らざるさまにて、眼《まなこ》のいろえりたるがごとく、(観客の正面定まりなきあたりに据《す》えて)たたずみてあり。風の音いよいよはげしく、このころより微《かす》かなるあか[#「あか」に傍点]色ようように月夜の空ににじみ来たる。
や
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