く唐突に身を動かして、下手の方より何ものかをきき出でたるがごとき姿す。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
妙信 (刹那《せつな》に来る不安の調)どうしたのだ。
若僧 (同じ姿を保ち)怪しい物の音《ね》がきこえる。女人の髪の毛が笹《ささ》の上を流れて行くような。
他の三人 (いささか高低を違えてほとんど同時に)え――
[#ここから2字下げ]
僧徒らはあたかもくらげ[#「くらげ」に傍点]の浮動するがごとき怪しき姿して物の音《ね》をたずねてあり。間。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
若僧 そこの杉の根元あたりで、あ、あんなに――
[#ここから2字下げ]
長き不安なる間。若僧は歩み出でて下手谷の底へ這い下れる森林の内を伺いのぞく。間。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
妙源 何ぞ見えるのか。
妙信 (恐怖に戦《おのの》きつつ)静かにせぬかよ。
[#ここから2字下げ]
間。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
若僧 くらやみが煙のようにわき上って
前へ
次へ
全39ページ中17ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
郡 虎彦 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング