がらぼくは思つてた。

山の獸《けもの》はそんな日に
すみかの穴にかたまつて
親子で吹雪を聞くのかな。

だけども餌《えさ》をとりに行き
死んぢやうこともありさうだ
けれど新聞にや出やしない。
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   月

月がほしいと
泣きながら
背《せな》の赤兒《あかご》は
手をのばす。

あれは取れぬと
云ひながら
子守はやけに
脊ゆする。

だけど子守も
つい昨夜《ゆふべ》
月を見てたら
かなしくて

郷里《くに》に歸つて
行きたいと
泣いてせがんで
ゐたさうな。
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   花

三日の雨に
しとしと雨に
さくらの花の
うす紅色《べにいろ》は
すつかりさめた。

五日の風に
そよそよ風に
さくらの花は
あら氣の毒な
ちらちら散つた。

七日の月は
あかるい月は
さくらの花の
散りしくうへに
しらじら照つた。
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   とんてんかん

鍛冶屋《かぢや》の小僧《こぞう》さん
はだかんぼ
春の日永《ひなが》を
とんてんかん。

窓のさくらは
きれいだが
わき見はならぬ
とんてんかん

なにがおもてを
通らうが
よそ見はならぬ
とんてんかん

くにのかあさん
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