この風こそは
秋風よ
山から吹いて
さびしいよ。
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   ほんとにしないけど

みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに見たんだよ。

あの夕やけの西の空
赤くそまつた雲のうへ
肥つたはだかのかはいい子。

みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに聞いたんだ。

その子が鳴らす金の鈴
遠くかすかにさはやかに
胸にしみ入るいいひびき。

みんなはほんとにしないけど
ぼくはたしかに知つてゐる。

その子はぼくを好《す》いてゐて
鈴を鳴らしてうれしそに
おいでおいでと誘ふんだ。
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   おとぎばなし

おとぎばなしを探《さが》さうと
町へ出かけてみたけれど
町はほんとにつまらない。

青い乘合自動車は
青いあひるのやうだけど
金の卵は生まないし

角《かど》の大きなビルデイング
お城のやうだが窓からは
さびしい王子は見てないし

いろんな人も通るけど
銀の魔法の杖をもつ
お爺さんは通らない。

やつぱり庭の芝のうへ
空を見ながらねころべば
おとぎばなしは見つかるよ。
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   雪

吹雪《ふぶき》の山でまた一人
死んだと出てる新聞を
見な
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