て、草地のあるところを移りあるいてくらしてゐるのですから、村と言つても、たゞ、見すぼらしいテント見たいなものゝほかには家らしい家もありません。従つてたかい屋根うらの部屋なぞへはいりたくもはいれないですむといふ意味です。
 かゝり官は、べつにわるい意志もない、この男を、この上又牢屋へ入れるのもかはいさうだといふのでさつき言つたホームス牧師の手にわたし、適当に、身のふり方をつけてやつてくれと命じました。
 ホームスさんは、ウ※[#小書き片仮名ヲ、387−下−1]ルターのお父さんをよんで相談しました。お父さんは、もう、こんなあきれた奴を引きとるのもこり/\です、どうにでもお取りはからひ下さるやうにと、泣いてたのみました。
 そこでホームスさんは、いろ/\に考へたあげくウ※[#小書き片仮名ヲ、387−下−5]ルターを、インドのコロンボーへ向けて出帆する、或船へ世話をして、船員として乗りこませました。
 その後一年たちましたが、ウ※[#小書き片仮名ヲ、387−下−8]ルターからは家へもホームスさんへも一片のたよりもよこしません。ホームスさんはとき/″\思ひ出しては、心配し怪しんでゐました。すると
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