それから又一年目にウ※[#小書き片仮名ヲ、387−下−11]ルターの船の船長からウ※[#小書き片仮名ヲ、387−下−11]ルターは逃亡して、行くへ不明だといふ知らせが来ました。あゝ、あのならずもの[#「ならずもの」に傍点]も、やつぱり救へなかつたかと言つて、ホームスさんはたんそく[#「たんそく」に傍点]しました。
二
それから六年たつと例の世界大戦争がはじまりました。その二年目の冬に、或日ホームスさんのところへ、アラビアのトルコ領のメソポタミヤから来た一通の手紙がとゞきました。あけて見ると、古ぼけた紙をちぎつた二十五枚の紙片へ鉛筆でかきつけたもので、思ひがけないウ※[#小書き片仮名ヲ、388−上−2]ルターからの音信でした。
「敬愛する牧師殿よ、こゝに、顔形から立居そぶりまで、まるで双子と言つてもいゝくらゐ、私とそつくりそのまゝの、あはれな一人の遊牧民上りの、つんぼの唖の乞食がゐます。」といふかき出しです。
「年も私と同年です。開戦当時から、何のあてもなく回々《ふいふい》教徒の村々をさまよひ歩き、トルコ軍の陣営にも出入りしてゐました。
トルコ兵は、その乞食が、のこ/\
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