勇士ウ※[#小書き片仮名ヲ]ルター(実話)
鈴木三重吉

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)唖《おし》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)ウ※[#小書き片仮名ヲ、386−上−16]ルター

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)すら/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

    一

 これは、こしらへた冒険談ではなく、全くほんたうの事実話ですから、そのつもりでお聞き下さい。
 今からちやうど二十年まへのことでした。或ときイギリスのシェフィールドといふ町の警察へ、一人の泥棒未遂の犯人があげられました。年のころ三十がッかうの、黒い大きな眼をした、背のごく低い男で、夜中に、或家の屋根裏の部屋へはいりこんだところをつかまつたのですが、唖《おし》を装つてゐるのか、ほんとに唖なのか、どんなに、おどかしても、だましても、てんで口をきゝません。現場をつかまへた刑事のいふところでは、この犯人は猫のやうに、すら/\と屋根裏
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