さうだといふ気もちばかりでなく、何だか、ぞくりとこはくなつて、どんどんかけ出してかへりました。ローズが一さんにかけつゞけるので、おばあさんは、
「ローズ、おまちよ。まつてくれ、ローズ。」と言ひながら、いきをきらして走りつゞけました。
その晩おばあさんは、こはいゆめばかり見ました。おばあさんがテイブルにかけて食事をしようとして、スープ入れの深皿《ふかざら》のふたをとりますと、その皿の中から、ふいにピエロがとび出して、がくりと鼻先へかみつきました。
おばあさんはびつくりして目をさましました。するとピエロがギヤン/\ほえたてる声がします。おやとおもつて、じつと耳をすましますと、それは、じぶんの気のせゐだつたと見えて、もう何の音もきこえません。
おばあさんはまた眠りこみましたが、こんどは、いつの間にか、どこかの長い往来を歩いてゐました。いつても/\はてしのない、長い村道です。と、そのうちに、向うの方に、百姓がものをはこぶ、おほきなかご[#「かご」に傍点]が一つころがつてゐます。おばあさんは、何のわけともなく、そのかごへ近づいていくのがこはくて、ひとりでに足がちゞまつて来ました。
でも、
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