んは、これが最後なので、とくべつに、バタを入れたスープをこしらへて飲ませました。ピエロは、それを一しづくものこさず、ぺろ/\とおいしさうに食べて、さもまんぞくしたやうに、しつぽをふりました。ローズは、その小犬を青いまへかけの中へだき入れました。
 二人は、人のものをかすめて、にげ出してゞもいくやうに、どん/\足早に原をよこぎつていきました。すると間もなく、穴の上の草ぶきの屋根が見えて来ました。その穴のところへつくと、おばあさんは、中にほかの犬がゐやしないかと、まへこゞみになつて耳をかたむけて聞きさぐりましたが、べつにうなりごゑもしません。これならピエロも中でいぢめられないですむわけです。ローズは、ぽろ/\涙をこぼしながら、ピエロをだきかゝへてなげこみました。
 二人ともしばらく足をとめて、じつと耳をかしげてゐますと、ピエロは、ウーと、にぶつた声で一こゑうなりましたが、間もなく、何ものかにかみつかれでもしたやうに、キヤン/\と、いたさうに鳴き、そのつぎには、さもくるしさうにウオ/\とうなりつゞけ、のちには出してくれ、上げてくれといふやうに、ワン/\ほえつゞけました。
 二人は、たゞかはい
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