しかたなくそばまで来ました。そして、そのかごのふたをあけて見かけるはずみに、中からふいにピエロがとび出して、片方の手にとッつかまりました。おばあさんはびつくりして、ふりはなさうともがきましたが、ピエロはどうしてもはなれません。おばあさんは、とう/\その小犬にぶら下られたまゝ、むがむ中でにげ出しました。
三
あくる朝おばあさんは、まだうすぐらいうちにおきました。そして、さつそくゆうべの穴のところへ出かけました。
いつて見ると、ピエロは、まだワン/\ほえてゐます。おそらく夜どうしほえつゞけて来たのでせう。
「おゝ/\、かはいさうに。ピエロよ。わたしがわるかつた。ゆるしておくれピエロよ。おゝ/\かはいさうに/\。」と、おばあさんは泣き/\よびかけました。すると、ピエロは、おばあさんの声を聞きわけて、こひしさうにクン/\言ひました。おばあさんは、ピエロをひき上げてやつて、もう死ぬまで、だいじに飼つてやらうときめました。
それで、すぐその足で、あの穴の粘土をほる井戸屋のうちへいつて、泣き/\わけをはなしてたのみました。井戸屋はわらひもしないで、すつかり聞いたのち、
「ふん、そ
前へ
次へ
全14ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング