な》の上から、口の大きな、びんをとり下《おろ》しました。中にはアルコールがはいつてゐます。言ふまでもなく、動物の標本用のびんで、とき/″\漁師たちが、ナイル河からきたいな魚をとつてもつて来るのを入れるために用意してあつたのです。
「さ、この中へ入れてくれ。」
「それは、しかし……」
「何がそれはしかしだ。私《わたし》の家《うち》の中にゐたものなら、どこまでも私のものぢやないか。おまいにはとにかく三十ピアスターのお金を上げるから、蛇だけはだまつてこの中へお入れなさい。それをぐづ/\お言ひだと、へんなことになつてしまふよ。そのわけを話さうかね。」
ケリムは、かう言はれて、しぶ/\とその蛇をびんの中へ入れこみました。デラポールトは、手早くそれへキルクの口をして、その上をくる/\とかたくしばりつけてしまひました。
「もうゐませんか。」
「まだをります。」
ケリムは、最初六ぴきはたしかにゐると言つた手まへ上、そのまゝ引つこんでしまふわけにはいきません。それでまたすぐに、ポン/\ヂャリン/\、シッ/\と、よび声やタンブーリンの音を立てゝ、つぎの蛇をよびました。
するとこんどは前のよりは少し小
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