さな蛇が、ひきだし台の下からのそ/\はひ出して、ケリムのそばへ走つて来ました。
デラポールトは、またすぐにそれをほかのびんに入れさせて口をしました。
「さあ、これで二ひきになつた。もうゐないかい?」と聞くきますと、ケリムは、しぶりきつた顔をしながら、
「この部屋にはもうをりません。」
「では、どこにゐる?」
ケリムは、つぎの応接間の方を向いて、
「あすこに一ぴきゐるやうなにほひがします。」
「ぢや、いつて見よう。」
デラポールトは、つぎの大きなびんを二つ両わきにかゝへ、小使にも二つもたせて、どん/\応接間へはいつていきました。ケリムはこまり切つたやうな顔をしながら、その部屋からも一ぴきよび出しました。その蛇は音楽ずきの蛇だと見えて、ピアノの下から出て来ました。デラポールトはようし、と言ひながら、ケリムがいやさうな顔をするのもかまはず、さつさとびんの中へ入れさせました。
「これで三びきだね。あともう三びきはどこにゐる? え、おい。」
「あとはおだいどころにをります。」と、ケリムは泣き出しさうな顔をして言ひました。
「さあ、いかう。」とデラポールトは先に立つていきました。ケリムは、ま
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