ンブーリンをひざの上におき、れいの薄荷のやうなにほひの出る薬の草を口にふくんで、
「アラー、/\、/\。」と、さけびながら、ふう/\煙をふきはじめました。ケリムはその間、シッ/\シッと口笛をならすやうな音を立てゝ、蛇をよびつゞけました。四人は四五分間もそれをつづけてゐましたが、蛇はてんで出て来さうにもありません。
デラポールトは、何をするんだいと、半分はばかにしながら、なほすこしの間がまんして見てゐますと、間もなく、いくつものさそり[#「さそり」に傍点]がぞろ/\と部屋の壁の上や、いすの下からはひ出して来ました。デラポールトはそれを見ると、
「あッ。」と言つて立ちすくみました。と、まだ/\出ます。こんどは窓の日よけや、デラポールトのベッドの上の蚊帳なぞをつたはつて下りて来ます。すべてゞ二十ぴき以上もゐるでせう。それがみんな、のそ/\走つて、ケリムのひざのところへあつまりました。ケリムはそれを両手ですくひ上げては、羊の皮の袋の中へおし入れ/\しました。そして、
「どうです。」と、いふやうに、デラポールトの顔を見上げました。
「なるほど。しかしそれはみんなさそり[#「さそり」に傍点]ばか
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