するんだよ。」
何てきたない手でせう。こんな手では神さまのお気には入りさうもない。
「さあ、ぼくのいふとほりを、言つてごらん。――神さま、私《わたし》はおなかゞすいてをりますッて、さうお言ひよ。」
男の子は、おなかがすいた、と、半分口のうちでかう言つて、いも虫のやうにむく/\とからだをくねらせました。
「きみ、じつとしてゐるんだよ。そのつぎはね。――私《わたし》はたいへんおなかゞすいてをります。どうぞ、あすは、トゥロットがシャベルを入れておいた、あの岩の下のくぼみへ、大きな三日月パンを入れといて下さいまし。――あゝ、さう/\。そして、アーメン。」
男の子は、
「アーメン。」と言つて、くす/\笑ひました。
トゥロットは、これですつかり満足して立ち上りました。そして、さも、この子をまもつてやる保護者かなぞのやうに、うなづいて見せて、どん/\お家《うち》へかへりました。
三
トゥロットは寝る間ぎはまで、あの子のことばかりかんがへてゐました。あの子があすの朝、あの岩の下から大きな三日月パンを見つけだしたら、どんなによろこぶでせう。トゥロットは、それをおもふと、をどり出し
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