にでも、チョコレイトのそばにだつても。――チョコレイトなんかない? それぢやストーヴの上にだつて、ちやんとおいてあるよ。」
「でも、父ちやんがとつちやふよ。それよか、あすこんとこの岩の下の穴ん中から出るといゝや。おれがさがしに来るから。」
そんなことは何でもないことだ。神さまは、いつもは、そんな穴の中へ入れたりなんかなさらないけれど、この子がさう言つておねがひすれば、人にとられないやうに、あすこんとこへ入れといて下さるにきまつてゐる。
「ね。だから、おいのりをお言ひよ。」
男の子はもじ/\しながら、
「だつて、おれ、そんなこと、言つたことねえんだ。」
おや/\何といふばかでせう。おいのりをしたことがないなんて。トゥロットはつく/″\あきれて、ためいきをつきました。
「それぢや、ぼく見たいに、かうしたまへ。」と、トゥロットは、まづ砂地へ両ひざをつきました。男の子はひざをまげて、地びたへつけようとして、ころりと前のめりにたふれました。
「ばか。」と、トゥロットはおこりました。やつと男の子はひざをつきました。
「こんどは、お手《てて》をかう組むの。――かうだよ。――さうぢやないよ。かう
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