あの神さまのことを。――遠くの海の中を航海していらつしやるお父さまに、おかはりがないやうにと、ぼくはまいばんおいのりをするんぢやないか。その神さまが、うそッぱち? トゥロットは、くわッと血が顔中へ上つて来ると一しよに、シャベルをふり上げて、ごつんと男の子の頭をなぐりつけました。男の子は、びつくりして、ひぢで顔をかばひながら、横目でにらみつけました。でも、それきりで、べつに食つてかゝつて来ようともしません。
「きみはわるい子だよ。不信者だよ。」
トゥロットは、もう、こんな子どもと口を利いてはいけないとおもつて、おうちへかへらうとして三足もふみ出しました。
 しかし、あの子が何にも食べないといふのは、かはいさうです。だから、おいのりのことを、ちやんと、をしへておいてやらなければならないと、おもひなほして、またひきかへしました。
「きみ、神さまにおいのりをすれば、何でもして下さるんだよ。こんばん、おねんねをするまへにおいのりをしてごらんよ。あすの朝、大きな三日月パンを下さいましつて。さうすれば、きつと下さるんだよ。ね。ね。」
「三日月パンがどこへ出る?」
「それは、どこにでもさ。テイブルの上
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