やるでせう。そんな、らんぼうなことがあるでせうか。
「では、きみのお父さまは、きみにまいにちパンを下さるやうに神さまにおいのりをしないの?」
男の子は何のことかわからないやうな顔をしてゐるので、トゥロットは、もう一ぺん、聞きかへしました。
「しねえ。」
トゥロットは、ほつとため息をしました。だからわかつた。おいのりをしないんだもの。それぢやだめだよ。
「ね、神さまのこと、一ぺんも話して下さらないの、お父さまは。」
「うん。神さまなんて、あるもんかいッて、おこるとさういふよ。」
何の意味か、トゥロットにはわかりませんが、何だか、それは、いゝおいのりではなささうにおもはれます。
「ぢや、きみは、何と言つて、おいのりをするの?」
男の子は、うす気味のわるい笑ひかたをするだけで返事をしません。
「ねえ。何ておいのりを上げるの?」
男の子は、やつばり、ばかにするやうに笑ひながら、
「神さまなんてものァ、うそつぱちだよ。」
と言ひました。トゥロットは、あつけにとられて、言葉も出ませんでした。神さまのことを、うそつぱちだなんて。ぼくがまいばんお母さまにをそはるとほりを言つて、おいのりをする
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