乞食の子
鈴木三重吉
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)かけ上《のぼ》つて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うそ[#「うそ」に傍点]だ。
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)じり/\して
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
一
トゥロットの別荘のうしろは、きれいな小さな砂浜になつてゐました。今トゥロットは、そこへ下りてあすんでゐます。そこへは村の人なぞはめつたに来ません。ですから、海のきはへさへ出なければ、一人でそこであすんでもいゝと、おゆるしが出てゐるのでした。
でも、お庭には、ちやんと女中のジャンヌがこしをかけて、見ないやうなふりをして、ちよいちよい、こつちをみてゐます。
トゥロットは、シャベルで大きな穴をほり、その砂をつみ上げて大きなお山をこしらへました。海の中につかつてゐる、そつちこつちの大岩や、砂の上に眠つてゐる、いろんな岩にもまけないやうな、大きなお山が出来ました。
「お坊ちやま、早くいらつしやいまし。お三時でございますよ。」
トゥロットは斜面をかけ
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