乞食の子
鈴木三重吉

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)かけ上《のぼ》つて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)うそ[#「うそ」に傍点]だ。

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)じり/\して
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

    一

 トゥロットの別荘のうしろは、きれいな小さな砂浜になつてゐました。今トゥロットは、そこへ下りてあすんでゐます。そこへは村の人なぞはめつたに来ません。ですから、海のきはへさへ出なければ、一人でそこであすんでもいゝと、おゆるしが出てゐるのでした。
 でも、お庭には、ちやんと女中のジャンヌがこしをかけて、見ないやうなふりをして、ちよいちよい、こつちをみてゐます。
 トゥロットは、シャベルで大きな穴をほり、その砂をつみ上げて大きなお山をこしらへました。海の中につかつてゐる、そつちこつちの大岩や、砂の上に眠つてゐる、いろんな岩にもまけないやうな、大きなお山が出来ました。
「お坊ちやま、早くいらつしやいまし。お三時でございますよ。」
 トゥロットは斜面をかけ
次へ
全15ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング