しよげこんだ顔をして、何をか口の中でぶつ/\言ひました。
「きみは、もう食べちやつたの?」と聞きますと、あひての子は、ぼんやりした目でトゥロットの顔を見上げました。
「もう食べちやつた?」
男の子は、かぶりをふりました。
「それぢや、あとでぢき食べるのね。」
男の子は目を地びたにおとして、くびをふりました。そして、さつきのやうにまた砂をいぢりはじめました。
「今日は食べないの?」
男の子は何とも返事をしません。トゥロットは、では、あゝ、きつとさうにちがひないとおもひました。
「きみは、きのふは物を食べても不消化だつたのね。」
男の子は目を大きくあけました。不消化といふ言葉がわからないのでへどもどしたやうですが、それでも、やつぱり、かぶりをふつて見せました。
「ぢやァ、おなかがいたいの?」
やつぱり、うんう。
「ぢやァ、なんか、おいたをした?」
さうでもない。
「そんなら、なぜ食べないの?」
男の子は、ベッと、地びたへつばきをはきました。おゝ、いやだ。トゥロットは、つばきなんかをはかれるのは大きらひです。おや、片手でぼり/\頭をかいて、もう一つの手では、指をぐいと鼻の穴の中へつ
前へ
次へ
全15ページ中4ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング