った、同じ湖水の女でした。ギンはじぶんの目がどうかなっているのではないかと思いました。おじいさんは、
「これは二人とも私《わたし》の娘だが、おまえさんはこの二人のどちらが好きなのか、それをまちがいなくおしえておくれ。そうすれば、のぞみどおりお嫁に上げましょう。」と、やさしく言ってくれました。
ギンは一しょうけんめいに二人を見くらべましたが、二人とも顔も背《せい》も着物もかざりも、そっくり同《おんな》じで、ちっとも見わけがつきません。もしまちがえたらそれきりだと思うと、ギンは気が気ではありませんでした。けれども、いつまで見くらべていても判断がつかないので、どうしたらいいかとこまっていますと、一人の方が、片足をかすかに前へ出しました。目には見えないくらい、ほんの少し動かしただけでしたが、ギンにはその片足の靴のひもが、さっきちらと見たように、ちがった結びかたがしてあるのが目につきました。ギンはやっとそれで見わけがついたので、
「わかりました。この人です。」と、いさんでまえへ出て、その女をゆびさしました。おじいさんは、
「なるほどよくあたった。それではこの娘をあげるからお家へつれておかえりな
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