湖水の女
鈴木三重吉
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)或《ある》山の上に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)或|家《うち》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縱に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いくども/\
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一
むかしむかし、或《ある》山の上にさびしい湖水がありました。その近くの村にギンという若ものが母親と二人でくらしていました。
或日《あるひ》ギンが、湖水のそばへ牛をつれていって、草を食べさせていますと、じきそばの水の中に、若い女の人が一人、ふうわりと立って、金《きん》の櫛《くし》で、しずかに髪をすいていました。下にはその顔が鏡にうつしたように、くっきりと水にうつッていました。それはそれは何《なん》とも言いようのない、うつくしい女でした。
ギンはしばらく立って見つめていました。そのうちに、何だか、じぶんのもっている、大麦でこしらえたパンとバタを、その女の人にやりたくなって、そっと、岸へ下《お》りていきました。
女
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