笑い出しました。みんなは、あっけにとられて女の顔を見ました。ギンもびっくりして、あわてて肩に手をかけて、
「おい、何です。しずかにおしなさい。」と言いました。ギンはみんなの人にきまりが悪くて、ほんとうに顔から火が出るような気がしました。
「だって、うれしいじゃありませんか。赤ん坊はこれですっかりこの世の苦しみをのがれて、神さまのおそばへいくのですもの。」
 女はこう答えて、
「しかしあなたはこれでとうとう私を三べんおぶちになりました。ではさようなら。」と言うなり、さっさとそこを出ていってしまいました。
 女はそれから急いで家へかえって、湖水から出て来た羊と牛と山羊と馬と豚をよびあつめました。
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「灰色のぶちの牝牛《めうし》よ、
 大きなぶちの牝牛よ、
 小さなぶちの牝牛よ、
 白いぶちの牝牛よ、
 みんなここへお出《い》でなさい。
 芝生《しばふ》にいる、
 その四ひきもお出でなさい。
 それから灰色のお前も、
 王さまのところから来た、
 白い牝牛も、
 その小さい黒い小牛も、早くお出で。
 さあさあみんなでかえりましょう。」
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 こう言
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