ってよびますと、そちこちで草を食べていた牛は、すぐに大急ぎで女のそばへあつまって来ました。四ひきの牝牛は畠《はたけ》をすいていました。女は、
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「おいおい、その灰色の牝牛たちよ、
おまえもお家へかえるのだよ。」
[#ここで字下げ終わり]
と、その牛も呼びました。それから羊も山羊も馬も豚も、すっかりあつまって来ました。そしてみんなで列をつくって、女のあとについて、どんどん湖水の中へかえってしまいました。
ギンは気狂《きちがい》のようになって、あとを追っかけていきましたが、もう女の姿も牛や羊や馬の影も見えませんでした。ひろびろとしたさびしい湖水の上には、ただ、四ひきの牝牛が引いていったすき[#「すき」に傍点]のあとが、一とすじ残っているばかりでした。
ギンは悲しさのあまりに、そのままその湖水の中へ飛びこんでしまいました。
のこされた三人の子どもは、こいしいお母さまをたずねて、毎日泣き泣き湖水のふちをさまよいくらしていました。すると女は或日《あるひ》水の中から出て来て三人をなぐさめました。
「おまえたちは、これから大きくなって、世の中の人たちの病気をなおす人にお
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