へいらしって、ひと晩とまってお帰りになりました。媛はまもなく宮中におあがりになって、貴《とうと》い皇后におなりになりました。お二人の中には、日子八井命《ひこやいのみこと》、神八井耳命《かんやいみみのみこと》、神沼河耳命《かんぬかわみみのみこと》と申す三人の男のお子がお生まれになりました。
天皇は、後におん年百三十七でおかくれになりました。おなきがらは畝火山《うねびやま》にお葬《ほうむ》り申しあげました。
するとまもなく、さきに日向《ひゅうが》でお生まれになった多芸志耳命《たぎしみみのみこと》が、お腹《はら》ちがいの弟さまの日子八井命《ひこやいのみこと》たち三人をお殺し申して、自分ひとりがかってなことをしようとお企《くわだ》てになりました。
お母上の皇后はそのはかりごとをお見ぬきになって、
「畝火山《うねびやま》に昼はただの雲らしく、静かに雲がかかっているけれど、夕方になれば荒《あ》れが来て、ひどい風が吹き出すらしい。木の葉がそのさきぶれのように、ざわざわさわいでいる」という意味の歌をお歌いになり、多芸志耳命《たぎしみみのみこと》が、いまに、おまえたちを殺しにかかるぞということを、
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