大久米命はそれを見つけて、天皇に、このなかのどの方をおもらいになりますかということを、歌に歌ってお聞き申しますと、天皇はいちばん前にいる方を伊須気依媛《いすけよりひめ》だとすぐにおさとりになりまして、
「あのいちばん前にいる人をもらおう」と、やはり歌でお答えになりました。大久米命は、その方のおそばへ行って、天皇のおおせをお伝えしようとしますと、媛は、大久米命が大きな目をぎろぎろさせながら来たので、変だとおぼしめして、

  あめ、つつ、
  ちどり、ましとと、
  など裂《さ》ける利目《とめ》。

とお歌いになりました。それは、
「あめ[#「あめ」に傍点]という鳥、つつ[#「つつに傍点」]という鳥、ましとと[#「ましとと」に傍点]という鳥やちどりの目のように、どうしてあんな大きな、鋭い目を光らせているのであろう」という意味でした。
 大久米命は、すぐに、
「それはあなたを見つけ出そうとして、さがしていた目でございます」と歌いました。
 媛《ひめ》のおうちは、狹井川《さいがわ》という川のそばにありました。そこの川原《かわら》には、やまゆりがどっさり咲いていました。天皇は、媛のおうち
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