もって、さっきのくまをさし向けた熊野の山の荒くれた悪神《わるがみ》どもは、ひとりでにばたばたと倒《たお》れて死にました。それといっしょに命の軍勢は、まわった毒から一度にさめて、むくむくと元気よく起きあがりました。
 命はふしぎにおぼしめして、高倉下《たかくらじ》に向かって、この貴《とうと》い剣《つるぎ》のいわれをおたずねになりました。
 高倉下《たかくらじ》は、うやうやしく、
「実はゆうべふと夢を見ましたのでございます。その夢の中で、天照大神《あまてらすおおかみ》と高皇産霊神《たかみむすびのかみ》のお二方《ふたかた》が、建御雷神《たけみかずちのかみ》をおめしになりまして、葦原中国《あしはらのなかつくに》は、今しきりに乱《みだ》れ騒《さわ》いでいる。われわれの子孫たちはそれを平らげようとして、悪神《わるがみ》どもから苦しめられている。あの国は、いちばんはじめそちが従えて来た国だから、おまえもう一度くだって平らげてまいれとおっしゃいますと、建御雷神《たけみかずちのかみ》は、それならば、私がまいりませんでも、ここにこの前あすこを平らげてまいりましたときの太刀《たち》がございますから、この太刀
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