みがいよいよ激しくなりました。命は、
「ああ、くやしい。かれらから負わされた手傷で死ぬるのか」と残念そうなお声でお叫びになりながら、とうとうそれなりおかくれになりました。
二
神倭伊波礼毘古命《かんやまといわれひこのみこと》は、そこからぐるりとおまわりになり、同じ紀伊《きい》の熊野《くまの》という村にお着きになりました。するとふいに大きな大ぐまが現われて、あっというまにまたすぐ消えさってしまいました。ところが、命《みこと》もお供の軍勢もこの大ぐまの毒気にあたって、たちまちぐらぐらと目がくらみ、一人のこらず、その場に気絶してしまいました。
そうすると、そこへ熊野《くまの》の高倉下《たかくらじ》という者が、一ふりの太刀《たち》を持って出て来まして、伏《ふ》し倒《たお》れておいでになる伊波礼毘古命《いわれひこのみこと》に、その太刀をさしだしました。命はそれといっしょに、ふと正気《しょうき》におかえりになって、
「おや、おれはずいぶん長寝《ながね》をしたね」とおっしゃりながら、高倉下《たかくらじ》がささげた太刀《たち》をお受けとりになりますと、その太刀に備わっている威光で
前へ
次へ
全242ページ中86ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング