《やまと》の鳥見《とみ》というところの長髄彦《ながすねひこ》という者が、兵をひきつれて待ちかまえておりました。命は、いざ船からおおりになろうとしますと、かれらが急にどっと矢を射《い》向けて来ましたので、お船の中から盾《たて》を取り出して、ひゅうひゅう飛んで来る矢の中をくぐりながらご上陸なさいました。そしてすぐにどんどん戦《いくさ》をなさいました。
 そのうちに五瀬命《いつせのみこと》が、長髄彦《ながすねひこ》の鋭い矢のために大きずをお受けになりました。命《みこと》はその傷をおおさえになりながら、
「おれたちは日の神の子孫でありながら、お日さまの方に向かって攻めかかったのがまちがいである。だからかれらの矢にあたったのだ。これから東の方へ遠まわりをして、お日さまを背なかに受けて戦おう」とおっしゃって、みんなをめし集めて、弟さまの命といっしょにもう一度お船におめしになり、大急ぎで海のまん中へお出ましになりました。
 その途中で、命はお手についた傷の血をお洗いになりました。
 しかしそこから南の方へまわって、紀伊国《きいのくに》の男《お》の水門《みなと》までおいでになりますと、お傷の痛《いた》
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