すと、その玉が、ご覧《らん》のように、どうしても底から離れないのでございます」と言いました。
媛《ひめ》は命《みこと》のお姿を見ますと、すぐにおとうさまの海の神のところへ行って、
「門口にきれいな方がいらしっています」と言いました。
海の神は、わざわざ自分で出て見て、
「おや、あのお方は、大空からおくだりになった、貴い神さまのお子さまだ」と言いながら、急いでお宮へお通し申しました。そしてあしかの毛皮を八|枚《まい》重《かさ》ねて敷《し》き、その上へまた絹の畳《たたみ》を八枚重ねて、それへすわっていただいて、いろいろごちそうをどっさり並《なら》べて、それはそれはていねいにおもてなしをしました。そして豊玉媛をお嫁《よめ》にさしあげました。
それで命《みこと》はそのまま媛《ひめ》といっしょにそこにお住まいになりました。そのうちに、いつのまにか三年という月日がたちました。
すると命はある晩、ふと例の針《はり》のことをお思い出しになって、深いため息をなさいました。
豊玉媛《とよたまひめ》はあくる朝、そっと父の神のそばへ行って、
「おとうさま、命《みこと》はこのお宮に三年もお住まいになっ
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