ふしぎに思って上を向いて見ますと、かつらの木にきれいな男の方がいらっしゃいました。
 命は、その女に水をくれとお言いになりました。女は急いで玉の器にくみ入れてさしあげました。
 しかし命はその水をお飲みにならないで、首にかけておいでになる飾《かざ》りの玉をおほどきになって、それを口にふくんで、その玉の器の中へ吐《は》き入れて、女にお渡しになりました。女は器を受け取って、その玉をとり出そうとしますと、玉は器の底に固《かた》くくっついてしまって、どんなにしても離《はな》れませんでした。それで、そのままうちの中へ持ってはいって、豊玉媛にその器ごとさし出しました。
 豊玉媛《とよたまひめ》は、その玉を見て、
「門口《かどぐち》にだれかおいでになっているのか」と聞きました。
 女は、
「井戸のそばのかつらの木の上にきれいな男の方がおいでになっています。それこそは、こちらの王さまにもまさって、それはそれはけだかい貴《とうと》い方でございます。その方が水をくれとおっしゃいましたから、すぐに、この器へくんでさしあげますと、水はおあがりにならないで、お首飾りの玉を中へお吐き入れになりました。そういたしま
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