ら、それについてどこもでも流れておいでになると、しまいにたくさんのむねが魚のうろこのように立ち並《なら》んだ、大きな大きなお宮へお着きになります。それは綿津見《わたつみ》の神という海の神の御殿《ごてん》でございます。そのお宮の門のわきに井戸《いど》があります。井戸の上にかつらの木がおいかぶさっておりますから、その木の上にのぼって待っていらっしゃいまし。そうすると海の神の娘《むすめ》が見つけて、ちゃんといいようにとりはからってくれますから」と言って、力いっぱいその船を押し出してくれました。

       二

 命《みこと》はそのままずんずん流れてお行きになりました。そうするとまったく塩椎神《しおつちのかみ》が言ったように、しばらくして大きな大きなお宮へお着きになりました。
 命はさっそくその門のそばのかつらの木にのぼって待っておいでになりました。そうすると、まもなく、綿津見神《わたつみのかみ》の娘《むすめ》の豊玉媛《とよたまひめ》のおつきの女が、玉の器《うつわ》を持って、かつらの木の下の井戸《いど》へ水をくみに来ました。
 女は井戸の中を見ますと、人の姿《すがた》がうつっているので、
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