っておしまいになりまして、ひとりで海ばたに立って、おいおい泣《な》いておいでになりました。そうすると、そこへ塩椎神《しおつちのかみ》という神が出てまいりまして、
「もしもし、あなたはどうしてそんなに泣いておいでになるのでございます」と聞いてくれました。弟さまは、
「私《わたし》はおあにいさまのつり針を借りてりょうをして、その針を海の中へなくしてしまったのです。だから代わりの針をたくさんこしらえて、それをお返しすると、おあにいさまは、どうしてももとの針を返せとおっしゃってお聞きにならないのです」
こう言って、わけをお話しになりました。
塩椎神《しおつちのかみ》はそれを聞くと、たいそうお気の毒に思いまして、
「それでは私がちゃんとよくしてさしあげましょう」と言いながら、大急ぎで、水あかが少しもはいらないように、かたく編んだ、かごの小船《こぶね》をこしらえて、その中へ火遠理命《ほおりのみこと》をお乗せ申しました。
「それでは私が押《お》し出しておあげ申しますから、そのままどんどん海のまんなかへ出ていらっしゃいまし。そしてしばらくお行きになりますと、向こうの波の間によい道がついておりますか
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