の子供が生まれました。名前は日子番能邇邇芸命《ひこほのににぎのみこと》とつけました。中つ国へくだしますには、この子がいちばんよいかと存じます」とおっしゃいました。
それで大神は、そのお孫さまの命《みこと》が大きくおなりになりますと、改めておそばへ召して、
「下界に見えるあの中つ国は、おまえの治める国であるぞ」とおっしゃいました。命は、かしこまって、
「それでは、これからすぐにくだってまいります」とおっしゃって、急いでそのお手はずをなさいました。そしてまもなく、いよいよお立ちになろうとなさいますと、ちょうど、大空のお通り道のある四つじに、だれだか一人の神が立ちはだかって、まぶしい光をきらきらと放ちながら、上は高天原《たかまのはら》までもあかあかと照らし、下は中つ国までいちめんに照り輝《かがや》かせておりました。
天照大神《あまてらすおおかみ》と高皇産霊神《たかみむすびのかみ》とはそれをご覧になりますと、急いで天宇受女命《あめのうずめのみこと》をお呼びになって、
「そちは女でこそあれ、どんな荒《あら》くれた神に向かいあっても、びくともしない神だから、だれをもおいておまえを遣《つかわ》す
前へ
次へ
全242ページ中60ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング