建御雷神《たけみかずちのかみ》はそれでひとまず安心して、大空へ帰りのぼりました。そして天照大神《あまてらすおおかみ》と高皇産霊神《たかみむすびのかみ》に、すっかりこのことを、くわしく奏上《そうじょう》いたしました。
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 笠沙《かささ》のお宮

       一

 天照大神《あまてらすおおかみ》と高皇産霊神《たかみむすびのかみ》とは、あれほど乱《みだ》れさわいでいた下界を、建御雷神《たけみかずちのかみ》たちが、ちゃんとこちらのものにして帰りましたので、さっそく天忍穂耳命《あめのおしほみみのみこと》をお召《め》しになって、
「葦原《あしはら》の中つ国はもはやすっかり平《たい》らいだ。おまえはこれからすぐにくだって、さいしょ申しつけたように、あの国を治めてゆけ」とおっしゃいました。
 命《みこと》はおおせに従って、すぐに出発の用意におとりかかりになりました。するとちょうどそのときに、お妃《きさき》の秋津師毘売命《あきつしひめのみこと》が男のお子さまをお生みになりました。
 忍穂耳命《おしほみみのみこと》は大神のご前《ぜん》へおいでになって、
「私たち二人に、世嗣《よつぎ》
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