《しなの》より外へはひと足も踏《ふ》み出しはいたしません。また、父や兄の申しあげましたとおりに、この葦原《あしはら》の中つ国は、大空の神のお子さまにさしあげますでございます」と、平たくなっておわびしました。
 そこで建御雷神《たけみかずちのかみ》はまた出雲《いずも》へ帰って来て、大国主神《おおくにぬしのかみ》に問いつめました。
「おまえの子は二人とも、大神のおおせにはそむかないと申したが、おまえもこれでいよいよ言うことはあるまいな、どうだ」と言いますと、大国主神は、
「私にはもう何も異存はございません。この中つ国はおおせのとおり、すっかり、大神のお子さまにさしあげます。その上でただ一つのおねがいは、どうぞ私の社《やしろ》として、大空の神の御殿《ごてん》のような、りっぱな、しっかりした御殿をたてていただきとうございます。そうしてくださいませば私は遠い世界から、いつまでも大神のご子孫にお仕え申します。じつは私の子は、ほかに、まだまだいくたりもありますが、しかし、事代主神《ことしろぬしのかみ》さえ神妙にご奉公いたします上は、あとの子たちは一人も不平を申しはいたしません」
 こう言って、いさぎ
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