《つかわ》しになるほかはございません。しかし尾羽張神は、天安河の水をせきあげて、道を通れないようにしておりますから、めったな神では、ちょっと呼《よ》びにもまいれません。これはひとつ天迦久神《あめのかくのかみ》をおさしむけになりまして、尾羽張神がなんと申しますか聞かせてご覧になるがようございましょう」と申しあげました。
 大神はそれをお聞きになると、急いで天迦久神《あめのかくのかみ》をおやりになってお聞かせになりました。
 そうすると尾羽張神《おはばりのかみ》は、
「これは、わざわざもったいない。その使いには私でもすぐにまいりますが、それよりも、こんなことにかけましては、私の子の建御雷神《たけみかずちのかみ》がいっとうお役に立ちますかと存じます」
 こう言って、さっそくその神を大神のご前《ぜん》へうかがわせました。
 大神はその建御雷神に、天鳥船神《あめのとりふねのかみ》という神をつけておくだしになりました。
 二人の神はまもなく出雲国《いずものくに》の伊那佐《いなさ》という浜にくだりつきました。そしてお互《たが》いに長い剣《つるぎ》をずらりと抜《ぬ》き放《はな》して、それを海の上にあお
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