嫁と子供たちがそれを聞きつけて、びっくりして、下界へおりて来ました。そして泣き泣きそこへ喪屋《もや》といって、死人を寝かせておく小屋をこしらえて、がんを供物《くもつ》をささげる役に、さぎをほうき持ちに、かわせみをお供《そな》えの魚《さかな》取りにやとい、すずめをお供えのこめつきに呼《よ》び、きじを泣き役につれて来て、八日《ようか》八晩《よばん》の間、若日子の死がいのそばで楽器をならして、死んだ魂《たましい》を慰《なぐさ》めておりました。
そうしているところへ、大国主神《おおくにぬしのかみ》の子で、下照比売《したてるひめ》のおあにいさまの高日子根神《たかひこねのかみ》がお悔《くや》みに来ました。そうすると若日子《わかひこ》の父と妻子《つまこ》たちは、
「おや」とびっくりして、その神の手足にとりすがりながら、
「まあまあおまえは生きていたのか」
「まあ、あなたは死なないでいてくださいましたか」と言って、みんなでおんおんと嬉《うれ》し泣《な》きに泣きだしました。それは高日子根神《たかひこねのかみ》の顔や姿《すがた》が天若日子《あめのわかひこ》にそっくりだったので、みんなは一も二もなく若日子
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