って、天安河《あめのやすのかわ》の河原《かわら》においでになる、天照大神《あまてらすおおかみ》と高皇産霊神《たかみむすびのかみ》とのおそばへ落ちました。
 高皇産霊神《たかみむすびのかみ》はその矢を手に取ってご覧《らん》になりますと、矢の羽根に血がついておりました。
 高皇産霊神は、
「この矢は天若日子《あめのわかひこ》につかわした矢だが」とおっしゃって、みんなの神々にお見せになった後、
「もしこの矢が、若日子が悪い神たちを射たのが飛んで来たのならば、若日子にはあたるな。もし若日子が悪い心をいだいているなら、かれを射殺せよ」とおっしゃりながら、さきほどの矢が通って来た空の穴《あな》から、力いっぱいにお突きおろしになりました。
 そうするとその矢は、若日子がちょうど下界であおむきに寝《ね》ていた胸のまん中を、ぷすりと突き刺《さ》して一ぺんで殺してしまいました。
 若日子のお嫁《よめ》の下照比売《したてるひめ》は、びっくりして、大声をあげて泣《な》きさわぎました。
 その泣く声が風にはこばれて、大空まで聞こえて来ますと、若日子の父の天津国玉神《あまつくにたまのかみ》と、若日子のほんとうのお
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