かねのかみ》は、
「それでは名鳴女《ななきめ》というきじがよろしゅうございましょう」と申しあげました。大神たちお二人はそのきじをお召《め》しになって、
「おまえはこれから行って天若日子《あめのわかひこ》を責めてこい。そちを水穂国《みずほのくに》へおくりだしになったのは、この国の神どもを説き伏せるためではないか、それだのに、なぜ八年たってもご返事をしないのか、と言って、そのわけを聞きただしてこい」とお言いつけになりました。
名鳴女は、はるばると大空からおりて、天若日子のうちの門のそばの、かえでの木の上にとまって、大神からおおせつかったとおりをすっかり言いました。
すると若日子のところに使われている、天佐具売《あめのさくめ》という女が、その言葉を聞いて、
「あすこに、いやな鳴き声を出す鳥がおります。早く射《い》ておしまいなさいまし」と若日子にすすめました。
若日子は、
「ようし」と言いながら、かねて大神からいただいて来た弓《ゆみ》と矢《や》を取り出して、いきなりそのきじを射殺してしまいました。すると、その当たった矢が名鳴女の胸《むね》を突《つ》き通して、さかさまに大空の上まではねあが
前へ
次へ
全242ページ中49ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
鈴木 三重吉 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング