いもという、小さな草の実で、着ている着物は、ひとりむしの皮を丸はぎにしたものでした。
 大国主神は、その神に向かって、
「あなたはどなたですか」とおたずねになりました。しかし、その神は口を閉《と》じたまま名まえをあかしてくれませんでした。大国主神はご自分のお供の神たちに聞いてご覧になりましたが、みんなその神がだれだかけんとうがつきませんでした。
 するとそこへひきがえるがのこのこ出て来まして、
「あの神のことは久延彦《くえびこ》ならきっと存じておりますでしょう」と言いました。久延彦というのは山の田に立っているかかしでした。久延彦《くえびこ》は足がきかないので、ひと足も歩くことはできませんでしたけれど、それでいて、この下界のことはなんでもすっかり知っておりました。
 それで大国主神は急いでその久延彦《くえびこ》にお聞きになりますと、
「ああ、あの神は大空においでになる神産霊神《かみむすびのかみ》のお子さまで、少名毘古那神《すくなびこなのかみ》とおっしゃる方でございます」と答えました。大国主神はそれでさっそく、神産霊神《かみむすびのかみ》にお伺《うかが》いになりますと、神も、
「あれはたし
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