お立ちになるといっしょに、そのおへやはいきなりめりめりと倒《たお》れつぶれてしまいました。
大神は、
「おのれ、あの小僧《こぞう》ッ神め」と、それはそれはお怒《いか》りになって、髪《かみ》の毛をひと束ずつ、もどかしく解きはなしていらっしゃるまに、こちらの大国主神はいっしょうけんめいにかけつづけて、すばやく遠くまで逃げのびていらっしゃいました。
すると大神は、まもなくそのあとを追っかけて、とうとう黄泉比良坂《よもつひらざか》という坂の上までかけつけていらっしゃいました。そしてそこから、はるかに大国主神を呼びかけて、大声をしぼってこうおっしゃいました。
「おおいおおい、小僧ッ神。その太刀と弓矢をもって、そちのきょうだいの八十神《やそがみ》どもを、山の下、川の中と、逃げるところへ追いつめ切り払《はら》い、そちが国の神の頭《かしら》になって、宇迦《うか》の山のふもとに御殿を立てて住め。わしのその娘《むすめ》はおまえのお嫁《よめ》にくれてやる。わかったか」とおどなりになりました。
大国主神《おおくにぬしのかみ》はおおせのとおりに、改めていただいた、大神《おおかみ》の太刀《たち》と弓矢《ゆみ
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