いるな。これは感心なやつだ」とお思いになりながら、安心して、すやすやと寝いっておしまいになりました。
大国主神は、この上ここにぐずぐずしていると、まだまだどんなめに会うかわからないとお思いになって、命《みこと》がちょうどぐうぐうおやすみになっているのをさいわいに、その長いお髪《ぐし》をいく束《たば》にも分けて、それを四方のたる木というたる木へ一束ずつ縛《しば》りつけておいたうえ、五百人もかからねば動かせないような、大きな大きな大岩を、そっと戸口に立てかけて、中から出られないようにしておいて、大神《おおかみ》の太刀《たち》と弓矢《ゆみや》と、玉の飾りのついた貴《とうと》い琴《こと》とをひっ抱《かか》えるなり、急いで須勢理媛《すぜりひめ》を背なかにおぶって、そっと御殿をお逃《に》げ出しになりました。
するとまの悪いことに、抱えていらっしゃる琴が、樹《き》の幹にぶつかって、じゃらじゃらじゃらんとたいそうなひびきを立てて鳴りました。
大神はその音におどろいて、むっくりとお立ちあがりになりました。すると、おぐしがたる木じゅうへ縛りつけてあったのですから、大力《おおぢから》のある大神がふいに
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