してしまいになりました。
しかし、神のおくやしみは、そんなことではお癒《い》えになるはずもありませんでした。神は、どうかしてもう一度、女神に会いたくおぼしめして、とうとうそのあとを追って、まっくらな黄泉《よみ》の国までお出かけになりました。
二
女神《めがみ》はむろん、もうとっくに、黄泉《よみ》の神の御殿《ごてん》に着いていらっしゃいました。
すると、そこへ、夫の神が、はるばるたずねておいでになったので、女神は急いで戸口へお出迎えになりました。
伊弉諾神《いざなぎのかみ》は、まっくらな中から、女神をお呼《よ》びかけになって、
「いとしきわが妻の女神よ。おまえといっしょに作る国が、まだできあがらないでいる。どうぞもう一度帰ってくれ」とおっしゃいました。すると女神は、残念そうに、
「それならば、もっと早く迎えにいらしってくださいませばよいものを。私はもはや、この国のけがれた火で炊《た》いたものを食べましたから、もう二度とあちらへ帰ることはできますまい。しかし、せっかくおいでくださいましたのですから、ともかくいちおう黄泉《よみ》の神たちに相談をしてみましょう。どうぞ
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